朝日新聞社・東京大学谷口研究室共同研究 「衆院選2024ボートマッチ」に対する意見書

朝日新聞社・東京大学谷口研究室共同研究

「衆院選2024ボートマッチ」に対する意見書

2024年10月25日

一般社団法人 日本若者協議会

 現在、第7次エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の見直しが進められる一方、第50回衆議院議員総選挙が10月27日に迫っている。日本の未来を決める機会が重なり、大変重要な時期である。そんな中、朝日新聞と東京大学谷口研究室が共同で調査を行う「衆院選2024ボートマッチ」の政治・政策スタンスの「気候変動問題」において「気候変動問題に対応」と「生活水準の維持」を対立軸に候補者・政党比較が行われている(写真、左下)。

 しかし、気候変動対策を行うことは、生活の質だけでなく、エネルギーや社会経済、産業等、あらゆる面でシナジーを産むことがIPCCの第6次評価報告書にも記載されている。例えば、住宅・建築物の断熱・省エネ機器の導入が進むことは、気候変動対策のみならず、生活環境の改善、光熱費の削減などに資するものである。

 気候変動の項目を入れない候補者アンケートが多い中、質問項目として入ったことは評価する。一方、今回の気候変動対策についての設問は、質問を受けた候補者、並びに読者に対して、「気候変動対策が生活水準を犠牲にする」との誤解を与えかねない内容である。日本社会においては、気候変動対策が生活水準を悪化させるとの認識が他国と比べて極めて強い。そして、そのような単純化された認識が、適切な気候変動対策を阻害させている可能性がある。

 私たちは、今回の「気候変動問題」に関する質問設定に対する対応策、並びに質問設定の段階で社内での各担当部署との連携を図ること、各専門家やNGO・NPO等の市民団体への助言を求めること等の再発防止策を求める。

以上

【写真】

朝日新聞(2024)「朝日新聞ボートマッチ」https://www.asahi.com/senkyo/shuinsen/2024/asahitodai/?iref=votematch#at_Seito(2024年10月25日閲覧)

【参考資料】

日本科学未来館(2019)「世界市民会議 『気候変動とエネルギー』 ミニ・パブリックスのつくる 市民の声 」 https://www.miraikan.jst.go.jp/aboutus/docs/exhibition_activity_report_11.pdfpp.143

【賛同】

FoE Japan

国際環境NGO 350.org Japan

一般社団法人環境政策対話研究所 理事 村上千里

東北大学教授 明日香 壽川

東京大学未来ビジョン研究センター教授 江守 正多
『気候変動対策のイメージとして「エアコンを我慢する」「車に乗るのを我慢する」など「生活水準を犠牲にする」のは旧来のものであり、日本では特にこのイメージが根強い傾向が見られます。一方、パリ協定以降に必要な対策の考え方はエネルギーなどについての「社会システム転換」であり、そこには多くの「生活水準の改善」の要素も存在します。今回の設問を作成された方が気候変動問題に詳しくなければ、このような理解を持たれていないことは仕方がないので、ことさらに設問の作成者を非難する意図はありません。しかし、このような機会に古いイメージが再生産されることは今後日本が気候変動対策に取り組むうえで障害になると考え、声をあげるべきと判断しました。気候変動の設問を入れてくださった姿勢自体には感謝申し上げます。』